やさしい味とパリパリ触感がたまらない。しゃくし菜漬は奥が深い

食文化

杓子のような形だからしゃくし菜。日本語っていうのはうまくできているもので、この野菜を的確に表現している言葉だと思います。

ええ、そうなんです、これがしゃくし菜でありまして、正式名称は雪白体菜(せっぱくたいさい)。他にも「おたま菜」「たい菜」「ゆり菜」など地域ごとに色々な名前がつけられているとか。

埼玉県の秩父地方は冬の寒さが厳しい典型的な内陸気候で、土壌の相性もあって、このしゃくし菜が盛んに生産され、10月下旬頃から収穫し、漬物にする習慣があるそうな。

と、話をしてくれたのは秩父の漬物屋、石川漬物の社長さん。

契約している農家の畑も案内していただき、収穫作業を見せていただくと、鮮度の抜群の証明とばかりに菜からキュッキュッと音が鳴る。茎も葉も収穫したてはとてもパリパリしていました。

根との境をちょいと鎌で切れば、じゅんわりと出てくる水分。うっひょー、中はとってもみずみずしいんだね!

こんな野菜をどうやって漬物にするのか、興味深く見学させてもらうと、基本は塩。そこに企業秘密(自然素材)ってやつが加えられて、しんなりしてくる。

「どうです、食べてみますか?」

まだ加工途中のしゃくし菜をひょいと摘み、どうぞと差し出された。

パリパリん。

いい歯応えだ。それに味がとてつもなく優しい。漬物というとちょっと食べると飽きてしまうものだけど、このしゃくし菜漬は違います。こりゃスゴイ。あっという間に虜になりました。ひとめぼれってやつでしょう。(うっとり)

さらにすごいのは葉の部分。広げてご飯を包むと、禁断のしゃくし菜巻ができあがる。そう、和歌山のめはり寿司のよう。これ、絶対おすすめです。

画像は2007年の撮影。交通新聞社旅の手帖取材時

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